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原発と復興を考える 23 起業します
JUGEMテーマ:大地震
 

23 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「地方に東北のアンテナショップを作る」

 

 都会には地方のアンテナショップはたくさんにありますが、小さな街では見かけることがないので、東北のお役に少しでも立ちたいとの思いで、「NPO 応援しよう!東北」(仮称)という、小さなアンテナショップをわが街「はりま」で作りたいと思います。

 何故にNPOで企業するのかは、

  必ず現金仕入れをする。

  被災地に負担をかけない金額で仕入れをしたい。

  利益は被災地に還元したい。

  助け合うことの大切さを提言していきたい。

  東北の復興(笑顔)をみんなの元気に繋げたい。 

 

ということで、団体を維持する以上の利益を追求するものではないからです。

  起業者:小嶋隆義 日時:5月中 連絡先:ryourinin@live.jp 

  とりあえず、姫路・加古川・明石等で小さな3店舗を今年中に考えています。

 神戸や大阪等の都会は、購買力があるので、一般企業が取り組めばよいでしょう。

 そして、できるだけ、有名な特産品ではなく埋もれたものを見つけて応援していくことを心がけたい。ボランティアはどこででもできます。

 

 ※これから起業するので、協力者を募集します。

  協力者について、以下の書を参考にしたい。

「ソーシャルビジネス入門」

ベン・コーエン/マル・ワーウィック著

 斉藤槙/赤羽誠=訳

 72p〜 □ひとりでどこまでできるか?

 ・・・正直に言えば、経営者やマネジャーがたったひとりで全体の雰囲気を決めて価値観(暗示的なものも明示的なものも)を書き出した、という会社のほうが、全員の合意から、ビジョンや使命、価値観が生まれた、という会社より、ずっと多いはずだ。こういうやり方のほうがうまくいく場合もある。しかし、このアプローチには落とし穴があることも忘れてはいけない。だから、たったひとりで始める前に、こんなことも考えてみよう。

 73p〜

・あなたが選んだ価値観が本当に心からのものなら、同僚たちはあなたが想像していた以上に、その価値観を 受け入れるかもしれない。

・仕事の締め切りや達成すべき目標を決めるプロセスに従業員が参加すれば、ただ単に命令されるより、ずっと大きな満足感をもって、熱心に働く。ところが、みんなで意思決定することやチームで仕事をすることをあなたが望んでいない場合、目標達成は困難になるだろう。

・人間は、もちろんそこには自分のために働いてくれている人たちも含まれるが、賢いものだ。彼らが思ってもみなかったような提案やアイデアを出してくれることもある。彼らの見識によって、これまで埋もれていた真の価値観に、近づくことができるかもしれない。

加えて、会社の価値観をどうやって定着させるか、という問題もある。もし価値観があなただけのものだった場合、そして会社の利害関係者たちがどんなことに動機づけられるかを考えずに決めてしまったのなら、従業員に会社が決めた価値観に従って行動してほしい、と説得するとき、逆風が吹いて当然だ。とはいえ、ビジョンや理念、価値観を決める際に、従業員を始めとする利害関係者をおそろしく上手に巻き込んだとしても、価値観は人々の意識に魔法みたいに刷り込めるものではないということにも、後で気がつくはずだ。

 ・・・略・・・

初めて会社を経営する人たちが、最初に学ばなければいけないもっとも厳しい教訓は、教師や親ならよくわかっているはずだが、同じことを繰り返さなければいけない、ということである。言いたいことを定着させるためには、何度も、何度も、繰り返す。話を聞こうというすべての人に、会社の価値観を伝える方法を数え切れないほど見つけなければいけないだろう。そして、それはクリエイティブであればあるほどいい。従業員のとった行動が会社の価値観を具現化しているとき、顧客や仕入れ先、コミユニティ、環境や他の従業員に対し、ポジティブな影響を与えるような行動をとったときは、それを褒めたたえる必要がある。

 

※ スタッフ間で価値観が定着する。

 ※ できればトリプル・ボトムラインを求める団体でありたい。

同書 16p〜

周囲の人や地球に対し、より広く責任を負うことに目覚めた企業は、巨大な多国籍企業も含めて増え続けている。興味深いのは、目覚めに従って行動した企業の多くが、利益も増やしていることだ。

 こうしたビジネスヘのアプローチは今日、さまざまな名前で呼ばれている。よく知られているのは、「社会責任ビジネス」とか「企業の社会責任(CSR)」というものだ。こうした動きをウォッチしている面々のなかには、このアプローチを以下のように表現する人もいる。「企業市民」「ダブル・ボトムライン」(利益というボトムライン以外のボトムライン)「トリプル・ボトムライン」(ヒト、地球、そして利益)「価値観に導かれるビジネス」「ソーシャルビジネス」「ブレンディッドバリュー(価値が交じり合った)」「持続可能な企業」――。ラベルの種類はたくさんある。

 これは決して新しい考え方ではない。実際、過去数世紀(数千年紀ではないにせよ)にわたって、優れたビジネスは投資家や従業員が満ち足りた生活、それぞれの時代に合った快適な生活を送ることができる手立てを提供してきた。どんなビジネスも小規模からスタートしたものだ。経営者も従業員も、みな近所に住んでいた。私たちがここで「ソーシャルビジネス」と呼んでいるものは、よき隣人になるということに他ならない。とはいえ、こうした考えの現代版が生まれたのは、わずか3分の1世紀前のことなのである。

・ビジネスの本来の目的は、価値をもたらすことである。ただ単に素材を商品に加工したり、便利なサービスを提供するだけでなく、従業員やコミュニティの生活に価値をもたらしたり、地球への負荷をできるだけ小さくすることで、次世代のために価値をもたらすこ とだ。利益を増やすことで富という形の価値を得ることもひとつだが、それは一部でしかない。

・ビジネスに関わる人々が、公正さ、思いやり、尊厳、自然に対する敬意など、人間が本来持つ根源的な善意の価値観に忠実に仕事をすれば、利潤だけを追求する欲は、消えていくはずだ。

 

 ※「トリプル・ボトムライン」(ヒト、地球、そして利益)

 ※どんなビジネスも小規模からスタートした

※よき隣人になるということ

 ※次世代のために価値をもたらす

 等を考えて起業していきたい。

 産業の復興を考えるときに、次のことを考えてもらいたい。

生産したものを、加工する。そして販売する。

この販売の部分をお手伝いしたいわけです。

※ 例えば魚であったなら、

 「これから食えなくなる魚」小松正之著

幻冬舎新書 2007年5月30日発行

 54p

塩釜は、かつて北洋漁業で繁栄した漁港である。一九六〇年代後半から七〇年代にかけ

ては、すり身の原料になるスケソウダラが全体の水揚げ量を支えていた。そのスケソウダラが、今ではほとんどゼロになっている。カレイ類も全部なくなってしまった。

 塩釜ではさまざまな水産加工品が売られているものの、地場の魚を使用したオリジナル

なものはない。これも外国から輸入したものか、境港など、国内の別の漁港から転送され

たものだ。

 しかし塩釜の場合、先はどの下関と違って、近海には枯渇していない資源もある。三陸沖には、カツオやサンマがたくさんいるのだ。生産量を上げ、街を活気づけようと思ったら、これをいかにして塩釜に水揚げさせるかがポイントだろう。現状では、塩釜に水揚げしても地元ではほとんど加工できないため、カツオもサンマも水揚げされないのだ。多くの漁船が、石巻や八戸に水揚げしている。

 しかし石巻や八戸の加工能力にも限界があるため、一日に一万トンも水揚げがあると、値段が暴落してしまう。たとえば五〇〇グラム程度の大型のサバが、四〇円から七〇円ぐらいの安値で取り引きされているのだ。

 

近海には枯渇していない資源もある。

生産量を上げ、街を活気づけようと思ったら、

         加工能力と販売網が必要なことが分かる。

 そしてこのような問題にも取り組みたい。

同書 69p

・・・魚の食べ方がわからない消費者は、スーパーで規格品や冷凍品を買うのである。ますます小売店が淘汰される悪循環に陥っているのである。

 ※ 食べ方の提案等も必要なようです。

posted by: 応援しよう東北!(雑華堂) 小嶋隆義 | 大災害 | 09:35 | comments(0) | - | - | - |
原発と復興を考える 22 雇用保障
JUGEMテーマ:大地震

22 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「雇用保障」

 

 「震災で雇い止め・解雇が急増」というニュースの記事を見るが、どの記事を見ても、それは氷山の一角でしかないでしょう。それは非正規労働者だけの問題だけではなく、地方の中小零細では、さながら地獄絵図への様相を呈してきているところもある。

昨夜に知り合いの料理店経営者に呼び止められて、当店(私が営んでいる居酒屋)の状況を聞かれた。「うちは、昔からずっと不景気な店なので変わりはないよ」と答えたら、苦笑いをしていた。姫路には魚町という飲み屋街があるのだが、ここが凄惨なほど暇らしい。そういえば連休前の夜とは思えないほどに人通りがない。

当店は以前に情報誌で「姫路で一番の頑固おやじの店」と紹介されたことがある。客を客とも思っていない店で、気に入らない客は追い返す、メニューもない、私の好きな話題しか認めないということで、関西弁で「どへんこ」と呼ばれています。当然、常連客しか受け入れない。彼らは私の講義を聞きに来ているのです。同業者からは「裏の料理組合長」ともよばれています。アンダーグラウンドでの影響力は大きい。

そんな店だから、たまにしか客はなく、その分たっぷりと講義を聴かされることになる悪循環が用意されている。ウルトラニッチな商売で、このニッチは「二進も三進も」というニッチです。そんな居酒屋のおやじが、若いエリートビジネスマンにドラッカーやポーターやコトラーを講義することもあるのですから、お笑い種です。

ウルトラ不景気にはウルトラニッチも、徹底すれば良いかも知れないが、「貧乏は美学に生きる者の特権」だと思える覚悟はいるでしょう。

そのことはその辺で措いておいて、自営業が厳しい状況に陥っていることもありますが、水商売からも溢れた人々はどこへ行くのでしょう。

・・・

震災で雇い止め・解雇が急増=1カ月で49%拡大―非正規労働者

時事通信 428()833分配信

 厚生労働省は28日、非正規労働者の雇い止めや解雇に関する全国集計結果(417日時点)を発表した。集計は36月の実施と予定が対象で、前回調査(318日時点、25月対象)に比べ491%増の6806人に上った。雇い止めや解雇は年度末に例年増える傾向にあるが、今回は東日本大震災の影響で急増した。
 対象者のうち被災事業所の労働者は3155人。被災状況別に見ると、建物・機械の倒壊・流失が1912人、部品の供給制約が584人、風評被害・観光客減少が353人、福島第1原発事故による避難勧告が119人など。 

・・・

 自粛ムードのことも言われていますが、自粛が言い訳にされる便乗もある。もともと苦しい状態ではあったのですが、よい言い訳が出来たと、都合よく利用した事業所があることも事実です。首を切りたいが切れずにいた、削減したい経費があったのだが削減しにくかった、煩わしい付き合いだった、ものが簡単に断ち切れる言い訳が与えられてしまったのではないでしょうか。

・・・

テーマパーク、大型連休に本格営業=自粛ムードで厳しい商戦に―首都圏

時事通信 428()231分配信

 東日本大震災の影響で臨時休業や営業時間の短縮を余儀なくされていた首都圏のレジャー施設の多くが、大型連休入りする29日から本格的に営業を再開する。原発事故に伴う電力供給の不安定が続き、娯楽を控える自粛ムードが漂う中、各社は例年にない厳しい連休商戦を迎える。
 東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)は28日、震災以来、休園していた東京ディズニーシーの営業を約1カ月半ぶりに再開した。運営するオリエンタルランドは隣接する東京ディズニーランドを含めた電力を確保するため、発電機3台を導入して万全を期している。
 節電のため規模を縮小していた施設で、通常の営業体制に戻す動きもある。子ども向け職業体験施設の「キッザニア東京」(東京都江東区)は、これまで平日に休止していた夕方入場の部を復活。よみうりランド(東京都稲城市)もアトラクションをすべて稼働する。
 一方、時短営業を続けるのは八景島シーパラダイス(横浜市)。水族館の終了時間を1時間半早める。鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)も営業を12時間短縮する。
 連休中の客足については「余震が続いているので厳しい」(東京都練馬区のとしまえん)、「例年より少ない」(オリエンタルランド)など、自粛ムードの影響を懸念する声が多い。 

・・・

 雇用はますます悪化していくことが予想される。復興需要は一時的なもので地域も限定され大企業優先となる。そして、そのゆり戻しの大きさも懸念材料でしょう。非正規雇用者の増加の問題が本格化していきます。

 大竹文雄先生の提案を覘いてみよう。

「競争と公平感」中公新書 2010年3月25日初版

53p

・・・日本の非正規労働に対する規制のあり方が二極化を加速している面もある。それは、正規雇用と非正規雇用との間の解雇規制の差であり、非正規雇用の長期化に伴う雇い止めの困難化である。

 日本は判例によって実質的な解雇規制の程度が決められてきた。その結果、正社員の解雇はかなり厳しいが、非正規社員の雇い止めは比較的簡単であった。しかし、非正規社員も何度も契約更新が繰り返されていると雇い止めが認められなくなるという判決の傾向がある。そのため、日本企業は、非正規社員の雇用期間は短く制限し、単純な仕事だけを行なってもらい、正社員に訓練を集中させるという傾向を強めてきた。こうした日本の労働法制が、二極化を促進してしまっているのである。

 この傾向を止めるには、正社員の雇用保障の程度を低めるか、5〜10年程度の任期のなかでは繰り返し雇用を自由にできる、任期付き正社員という制度を設けることが解決の方法である。そうすれば、現在よりも雇用が不安定になる人が出てくるかもしれないが、一年や二年しか雇用の見通しがない人の比率は減ることになる。現在の非正規労働者よりも雇用契約期間が長くなれば、安心して訓練を受け技能のレベルを上げることもできるだろう。あるいは、特定部門や特定の地域の仕事がなくなった場合には、雇用契約を解除できるという条件をつけた雇用契約が結べるようにすることも、現在の非正規社員よりも安定的な雇用形態になるかもしれない。

 

・正社員の雇用保障の程度を低めるか、

・5〜10年程度の任期のなかでは繰り返し雇用を自由にできる、

・任期付き正社員という制度。

165p〜

 正社員が非正規を考慮する仕組み

 労働市場の二極化に歯止めをかけるためには、非正規社員と正社員の雇用保障の差を小さくする必要がある。しかし、景気変動がある以上、全員の雇用保障を強化することは日本の経済力にとってマイナスである。非正規社員だけではなく、正社員も景気変動リスクを引き受けることを促す仕組みを作ることが必要だ。

 たとえば、「正社員の労務費削減を非正規社員削減の必要条件とする」、あるいは「非正規社員を削減するのであれば、正社員も一定程度削減しなければならない」というルールを、立法措置によって導入することは直接的な手法となる。そうすれば、「非正規社員を切るな」という組合からの提案も出てくるだろうし、非正規社員の雇用を守るために正社員の賃金カットに応じるかもしれない。企業の人材戦略も一変し、好景気に正社員の人数を絞ったまま一挙に大量の非正規社員を雇用するということもなくなるであろう。

 新たなルールにもとづく労使の自助努力を促す手法が難しいのであれば、政府が税金と社会保障による再配分をうまく使うことで、正規・非正規一体となったワークシェアリングと同じ効果をもたらすという手法もある。

 

その手法とは 本書166pから(本書の提案の多くは必読です)

・例えば、失業率(特に若年失業率としてもいい)が上がれば所得税率が上がるといった、戻し税と逆の仕組みを導入すればよい。

・あるいは、失業率に応じて年金額を変動させるというかたちに年金のマクロスライド制を修正することも考えられる。

・その税金を使って、非正規労働者に対するセーフティネットを強化していく。雇用自体を作り出してもよいし、所得を再分配してもよい。

○失業率と税率が連動すれば、正社員が非正規雇用や若年者の失業率に関心をもたざるを得なくなる。

・現状の正社員と非正規雇用の中間的雇用形態を作るのだ。10年程度の任期付き雇用制度を導入すれば、正社員の既得権にプレッシャーを与えることができる。

○こういった手法で、正社員が非正規社員の雇用や待遇を考慮せざるを得ないメカニズムを導入しなければ、二極化を解決することはできないだろう。

 つまりは「非正規切り」の問題は、不況という負の経済ショックを誰が負担するのかという問題なのだ。日本全体のパイが急激に縮小したショックを、非正規労働者が集中的に負担しているのが、いま起きていることである。

 

 貧困の固定化で、将来に多大な社会的コストを支払うことになることは避けたい。

 
posted by: 応援しよう東北!(雑華堂) 小嶋隆義 | 大災害 | 09:50 | comments(0) | - | - | - |
原発と復興を考える 21 漁業国有化
JUGEMテーマ:大地震

21 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「宮城県漁業 国有化」

 

 被災地復興の漁業の再建に「国有化案」が出ていることは興味深い。

 日本の漁業は多くの課題を抱えているので、

復興を機会に規制緩和を進める特区として、

日本の漁業の未来を問うモデル事業としても、

立ち上げる準備のための一時的な国有化は有効かも知れない。

 日本の漁業の問題は

 食生活の変遷、漁業者の職、資源の過剰利用、法の規制による失敗、港湾事業計画の無策、国際競争力、等、複雑に絡み合っているのだが、酷く縺れた釣糸のように切って捨てるわけにはいかない。

 

MNS産経ニュース 2011.4.26 21:10

漁船の9割使用不能「国有化案」も

 東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県で、約2万9千隻あった漁船の約9割が津波で流失したり、陸に打ち上げられるなどして使用不能になったことが26日、各県のまとめで分かった。被災地復興には漁業の再建が不可欠で、漁協が船や資材を購入して組織的に漁や養殖をする案が浮上しているほか、宮城県は漁業「国有化」も視野に入れ対応を模索している。

 調査で被害が確認されたのは計約1万8600隻で、被害金額は約1300億円。ただ、岩手県などでは調査が済んでおらず、今後の見通しを含めると使用不能の漁船は2万5700隻以上とみられる。

 宮城県では登録している約1万3700隻中、無事が確認できたのが千隻余り。残りの約1万2千隻が被害を受けたと集計した。

 岩手県では登録している約1万4300隻のうち、これまで5726隻の被害を確認した。しかし、同県は実際には全体の9割が使用不能とみている。

 

 私は十数年前に魚の養殖場を見て回ったことがある。とある・・海の養魚場の片隅にダイオキシンと書かれたポリタンクが無造作に並べられていた。何に使うのかと聞けば、海に張り巡らした網に付く藻を取るためだ、と言っていた。つまり「枯葉剤」です。有害であることは承知で、しかも漁協の指導だと言っていた。

 奇形の魚は出ませんか?と聞くと。たくさん出ますと答えた。その魚はどうするのですか?と聞くと、切り身にして都会のスーパーで売られている、とのことだった。皆さんもあがられるのですかと聞けば、気持ち悪いので食べませんとのことでした。私のとても驚いた表情を見て、説明をしてくださった方は、更にこう言った。どこでも皆がしていることですよ。私はこの時に、日本の漁業の終わりを感じた。崩れるときは哲学から崩れる。

 日本の漁業を考えるときに、領土問題のことも頭に浮かぶ。天然資源とは石油やガスだけではない。魚場という資源もある。日本の国の漁業資源への淡白な対応にはいつも疑問を感じます。日本の国は「漁業」は既に終わっていると考えているのではないだろうか。

 

「これから食えなくなる魚」小松正之著

幻冬舎新書 2007年5月30日発行

182p

日本の水産予算の三分の二は公共事業

 アメリカの3000億円、EUの5500億円という数字自体は、日本の水産予算(2600億〜2700億円)と比べて、それほど大きいわけではない。ただし日本が欧米と違うのは、予算の三分の二が漁港整備を中心とした公共事業に使われてしまうところである。漁船とかシステム改善に回される予算は、たった50億円しかない(図16)。

 それに対して、アメリカやEUは漁船建造にも多額の補助金を投入している。漁船の近代化や設備の改善については、WTO(世界貿易機関)でどんな議論があろうと彼らは金を出すのである。

 

 漁港の災害被害に対して、漁港整備を中心とした公共事業だけで終わってしまう可能性と不安が、「宮城県は漁業「国有化」も視野に入れ対応を模索している」ということになっているのだろう。数万隻の船の被害はどうする?普段から日本が、アメリカやEUのように漁船建造にも多額の補助金を投入していたならば、このような「国有化」の議論もなかったのかも知れない。

 もうひとつ「国有化」の議論が出ているのは、復興に投資してもそれに見合う漁業収益を得ることが難しい、ということもある。原油高の問題も出てきた。

 日本の漁業は既に倒産寸前なのです。

 

同書39p〜

30年以上前から始まっていた凋落

 わが国が「200カイリ漁業専管水域」を設定したのは、1977年のことである。それ以前から、中南米諸国を中心に排他的経済水域を200カイリに設定する流れが強まっており、日本はそれに反発していた。だが、1977年にアメリカ・ソ連の両国が200カイリ漁業水域を設定したことで、世界の趨勢には逆らえなくなってしまったのである。日本の遠洋漁業が世界各国から閉め出されるようになったのも、それによる。

 だが、それでも80年代の中頃までは生産量も生産額も伸びていた(図3)。遠洋漁業に代わる柱となったのは、日本の200カイリ内で行われる沖合漁業である。これが好調だった時期は、マイワシだけで450万トン、マサバだけで180万トンもの水揚げがあった。その二種だけで、2005五年の総生産量(572万トン)よりも多かったわけだ。

 だが、やがてイワシやサバが不漁になると、遠洋漁業に続いて沖合漁業も壊滅的な状態となり、さらには沿岸漁業も漸減。ピーク時の1982年には全体で3兆円近くあった漁業生産額は坂道を転げ落ちるように滅少し、2005年には1兆6000億円と半減して

しまった。「これは民間企業なら倒産状態です」―農林水産省の水産政策審議会で、民間の委員がはっきりとそう言ったことがあるが、それも当然だろう。本来なら、ここまで落ちる前に何か手を打っておくべきだったのだ。

 全体の数字を見ると、日本の漁業が奈落の底へ向かっていったのは平成に入ってからということになる。だが、実はそうではない。問題はもっと前から存在した。

 図4を見てほしい。80年代のピークは、決して日本漁業の「実力」を反映したものではなく、マイワシの一時的な豊漁によるものだったことがわかるだろう。「マイワシバブル」の分を差し引けば、実際には1974年あたりから日本の漁業の凋落は始まっていたのだ。つまり、世界で200カイリ問題が浮上し、日本の遠洋漁業に暗雲が立ち込めた時点で、将来を見越した対策を講じるべきだったのである。

 ところが「マイワシバブル」による生産量の増大に誤魔化されてしまい、日本は有効な手を打てなかった。これが、対応の遅れを招いた一つの要因だと私は見ている。

 

 被災による漁業復興は

30年以上前から始まっていた凋落に加え

汚染水の海洋投棄の問題も新たに加わり、更に困難なものとなった。

 

福島第1原発事故 FNN 427()1320分配信

全漁連など首相官邸訪れ、菅首相に汚染水海洋投棄について強く抗議

福島第1原子力発電所の事故をめぐり、全国漁業協同組合連合会などが首相官邸を訪れ、菅首相に対し、汚染水の海洋投棄は許し難い行為と強く抗議し、菅首相は「おわびする」と陳謝した。
27
日午前10時半すぎ、全漁連・服部郁弘会長は、「われわれに何の相談もなく、連絡もなく、汚染水を直接、海に大量放出しました。われわれ、漁業者をないがしろにし、海洋汚染により、漁業を崩壊させかねない許しがたい行為」と語った。・・・

 

 そして、国は水産資源は輸入すればよいと考えているようだ。

 また、漁業の3K問題で後継者難がある。

同書14p〜

深刻なのは、日本人が外国産の輸人魚ばかり食べているうちに、国内の漁業がすっかり衰えてしまったことである。たとえばエビは、一年間に供給されている30万トンのうち、国産は2万8000トン程度にすぎない。九割以上が外国産なのだ。

 実際、1949年に109万人いた日本の漁業者は、現在わずか22万人にまで減ってしまった。しかも、その半数は六〇歳以上の高齢者だ。この数字を間いただけでも、漁業が存続の危機を迎えていることがわかるのではないだろうか。

・・・略・・・

 また、流通業者も国内の漁業を守るような売り方をしてこなかった。昔は魚屋の店先で「魚のプロ」たち旬の食材を客に紹介し、調理方法などを教えていたものだが、今はそんな光景もすっかり目にしなくなった。大量に輸入したものを効率よく大量に売りさばくことばかり考えて、伝統的な食文化を大切にするような細かい対応を怠ってきたのである。このまま事態が悪化すれば、国内の漁業生産量はかぎりなくゼロに近づいていくだろう。これは決して荒唐無稽な話ではない。地方の漁港を見れば、あと20年もしないうちに潰

滅しそうなところはいくつもある。

 

 被災地の漁業復興は、日本の漁業復興の問題でもあるようです。

 
posted by: 応援しよう東北!(雑華堂) 小嶋隆義 | 大災害 | 09:01 | comments(0) | - | - | - |
原発と復興を考える 20 社会的断層
JUGEMテーマ:大地震
 

20 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「非正規雇用という社会的断層」

 ※社会保障の逆機能を見直さない限り、被災地の「職」の復興は困難を極める。

 

前回では、企業が消費税による「仕入れ税額控除の仕組みに合わせた人事・労務のあり方」を追求することで、企業に大きな利益が出ることが分かった。日本の特殊な消費税の現状がある限り、派遣労働者等の非正規雇用は減らない。詳しい内容は「消費増税で日本崩壊」斉藤貴男著を読んでください。

この書を読んで思ったことは、日本型消費税が10%になると正社員は一握りのエリート層になり、日本の労働者の大多数が不安定な非正規雇用となりそうだ、ということです。

消費税法、派遣法の見直しが必要と思われます。

 

 私は経済の発展と雇用の安定は対のもので、最も大切なことは両者の調和だと考えています。調和が乱れているのなら、両者はいずれ儚きものとなるでしょう。

 日本の社会的断層は「職」の問題でありそうです。

 その深い断層のひとつが非正規雇用であることは間違いがなさそうだ。

 ・非正規雇用者の比率が08年の段階で、

 ・雇用者の約3割にまで増加していたことに加えて、

 ・男性の非正規雇用者比率が上昇していた。

 ・それは90年代後半から急上昇している。

 ・雇用の保証が少ない非正規雇用者の困難は紛れもない活断層です。

 

「社会保障」宮本太郎

 岩波新書 2009年11月20日発行

2p〜

 社会的断層の拡がり

 日本社会に幾筋かの亀裂が走り、互いに縒りあわさりながら裂け目を拡げ、社会的な断層が形成されている。

 どのような亀裂が走り、いかに重なり合っているのか。主要な亀裂の一つは、相対的に安定した地位を確保している正規労働者層と、パート、アルバイト、派遣など不安定な地位にある非正規労働者層の間に走る。この亀裂はまずは所得の格差というかたちで現れている。正規労働者では、70%近くが年収300万円以上、50%近くが400万円以上であるのに対して、パート労働者の89.9%、派遣労働者の50.3%が、年収200万円未満である(総務省「平成19年労働力調査年報」)。

 ただし、正規労働者層のなかでも年収300万円未満が31.7%に及んでいることから窺えるように、正規か非正規かということだけが決定的であるわけではない。どのような企業に勤めるかも大きな亀裂の要因の一つである。もともと日本の経済は、大企業と中小零細企業の間で賃金格差が大きいことから二重構造などとも呼ばれていたが、グローバル化の進展がさらに明暗を分けた。

 

 日本の相対的貧困率は高く、働いている世代でも大きな貧困率が見られる。働くことで状況の改善が見られないケースがあることが、事態を一層深刻化させている。

 

前回に紹介した

「競争と公平感」大竹文雄著

 中公新書 2010年3月25日初版

 51p〜

男の非正規

「男の非正規」は、近年の労働市場の変化の象徴でもある。

 第一に、かつてなら非正規雇用者の雇用調整は、それほど深刻な貧困問題を引き起こさなかったが、世帯主の男性や単身男性が非正規雇用者ということが増えてきたため、非正規雇用の雇用調整が貧困問題に直結するようになってきたのだ。

 ・・・略・・・

 第二に、「男の非正規」が増えた背景に、技術革新があることだ。実は、25歳から54歳の年齢層の男性の就業率は2000年以前は、95パーセント前後であったが、2000年代に人って数パーセント低下している。特に若年男性の就業率の低下が大きい。

 52p

・・・技術革新やグローバル化の進展は、製品・サービス需要の不確実性を大きくした。需要の不確実性に対応するためには、二つの方法がある。第一は、正社員の雇用や賃金の不安定性を増すことで対応することである。第二は、正社員の雇用の安定性は維持したまま、非正規社員という雇用の保証が小さい労働者の雇用比率を増すことである。アメリカは、主に第一の方法で需要の不確実性の増大に対応し、日本は第二の方法で対応した。つまり、長時間労働で雇用が安定している正社員と低賃金で雇用が不安定な非正規社員という二極化である。それが、90年代末から2000年代にかけての非正規雇用者比率の高まりの理由である。

 

 世帯主の男性や単身男性が非正規雇用者ということが増えてきた。

 特に若年男性の就業率の低下が大きい。

 家計の主計を担う存在が、雇用の保証が小さい労働者となったので、

 貧困問題に直結するようになってきた。

 

 社会的断層は非正規、正規にかかわらず、世帯主の直下型になっているようです。

 しかし、その社会保障は逆機能となっている。

 

 この社会保障のあり方も見直さない限り、被災地の「職」の復興は困難を極める。

 

「社会保障」宮本太郎

7p〜

 厚生労働省の調査によれば、パート、アルバイト、嘱託などの名称の如何にかかわらず、週の所定労働時間が正社員と同じかそれより長い労働者のうち、就労の理由として「家計の主たる稼ぎ手として生活を維持するため」と答えた人の割合は51.6%に及ぶ(厚生労働省「平成18年パートタイム労働者総合実態調査結果の概況」)。男性の非正規労働者のうち、初めて就いた仕事が非正規であった男性(学生時代のアルバイトを除く)は、1982年10月からの五年間では7%であったのに、2002年10月からの五年間では31%に達している(総務省「平成19年就業構造基本調査」)。

 非正規の人々は、家計の主たる担い手に移行しつつあるにもかかわらず、年収が低いばかりか、社会保障によってカヴァーされていない。非正規労働者の雇用保険加入にはさまざまな制約があり、2008年の国会審議で舛添厚生労働大臣は、未加入の非正規労働者を1006万人、未加入率を58%と推計している。

 さらに非正規労働者は、労働時間が短かったり、就労が断続的であったりするがゆえに、厚生年金や健康保険に加入できないことが多い。かりに加入できても、低賃金であるために保険料を支払うことができない場合がある。さらに、こうした人々がより安定した仕事を目指そうとしても、職業訓練をはじめとした積極的労働市場政策への公的支出はたいへん低い。もはや働けることは生活の安定を意昧しないにもかかわらず、生活保護は稼働能力ある人々をはねつける。その結果、ワーキング・プア世帯の所得が生活保護受給世帯の所得を下回り、今度は生活保護の給付水準に引き下げ圧力が働くという悪循環が起きている。

 

本書の指摘は単なる貧困の問題ではなく、多分・・・国の形なのではないだろうか。

多くの非正規労働者が、社会保険から排除されている。

多くの非正規労働者が、いっさいの公的年金に加入していない。

大多数の非正規労働者が、雇用保険に加入していない。

上記の「制度的排除」から「実質的排除」される場合も多い。

例えば、国民健康保険では・・・、

9p

 国民健康保険は加入者が5000万人を突破する一方で、加入者の構成の変化は顕著である。1987年の段階では農林水産業と自営業が40.1%であったのに、これが2007年には18.2%に減少した。一方で無職者の割合は、27.3%から55.4%に増大している。国民健康保険に新たに加入した人々の異動経緯を見ると、企業の組合健保など、被用者保険からの異動が増大している(厚生労働省「平成一九年度国民健康保険実態調査」)。

 市町村が保険者となっている国民健康保険の場合、低所得の加入者が多いほど保険料が高くなる傾向がある。たとえば大阪の寝屋川市の場合、国保の加入者の8割以上が年収200万円以下とされるが、世帯所得200万円の四人家族の保険料は、全国トップの年間50万3900円である(毎日新聞2008年12月19日大阪版)。

 こうした背景のもと、滞納によって短期被保険者証を交付された被保険者は、2008年では前年度からさらに9万世帯ほど増えて124万世帯に達した。

 

 世帯所得200万円の四人家族の保険料が50万円超、これは払えないだろう。

 そして、本書では公共サービスの実質的排除傾向も指摘している。

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原発と復興を考える 19 小野善康教授
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19 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「小野善康教授」

 

MSN産経ニュースで、

小野善康教授は、被災地の雇用について「時限組織が必要」と述べられていた。

小野善康:平成22年10月―現在 内閣府経済社会総合研究所所長 大阪大学フェロー

 【東日本大震災】2011.4.5 20:27

〈復興を問う〉内閣府経済社会総合研究所 小野善康所長「雇用維持へ時限組織必要」

 −−東日本大震災の被災地では生活を維持する雇用のダメージも深刻だ

「生産拠点や住宅など社会基盤の復旧が急務だが、これら社会資本や住宅など建設関連需要で被災地の雇用は拡大する。2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震の際も、インフラ復旧で被災者雇用が増えた。ただ、復旧後も雇用を維持して生活の安定を図ることが重要だ」

 −−被災地の雇用を維持していくためには

 「各省と自治体が連携し、素早く効率的に復興に向けた政策を調整していくことが重要だ。国として復興に向けたグランド・デザインを提示し、その目的達成に向けた時限組織を立ち上げる必要がある」

 −−どのような組織か

 「日本は誰もが災害に不安を抱えている。今回に限らず、大災害時に時限組織が発動して、雇用、生産、国土計画など各省に渡る政策を調整する制度を確立しておけば国民も安心できる。時限組織なら平時にお金はかからず災害時にすぐ対応できる。これこそがもっとも基本的な国防だ」

 −−組織の財源はどうするのか

 「5年程度に区切って、全額復興に使う新税を作る。独立した会計にして、国民に使い道を明示することも重要だ。消費税なら1〜2%の増税でも年2〜5兆円程度の増収になる。こうした“復興税”により、幅広い用途で必要額が確保できる」

 −−民間が取り組むべき課題は

 「国民は普段の需要を維持することが重要だ。イベントの中止など過度な自粛ムードは、復興の妨げになる。そのとき東北の製品を優先的に使えば、被災地にお金が回り雇用も生まれる。被災地の復興は、需要と供給の両面で日本経済全体のためにもなる」

 

     雇用を増やす時限組織を発動し公共投資や公的サービスを行う

     復旧後も雇用を維持して生活の安定を図る

     財源は新税

     需要を維持する投資が雇用を生む

ということが述べられている。

小野理論では「長期の不況の悪循環を止めるのは、失業者を公共投資で雇用する政策が

必要」ということを言われていた。

 その理論を踏襲した被災者雇用の論となっている。

 小野教授の「守銭奴的流動性選好による不況理論」とは、

 

 「競争と公平感」大竹文雄著

 中公新書 2010年3月25日初版

148p〜

 小野教授の不況理論(小野理論)は、現代的な成長理論の枠組みで、需要変動による不況を説明することに成功している。

 小野理論を直感的に説明してみよう。モノやサービスは、消費すればするほど、追加的な満足度は低下していく。特定のモノやサービスは、どうしても飽きてきたり、一定以上消費することが不可能になる。しかし、お金はどれだけあっても、あればあるほどうれしい。お金は、どんなモノやサービスも購入できるという意味で流動性が高く、いわばトランプのジョーカーのようなものだからだ。つまり、お金には流動性という魅力が備わっているのである。

 こうしたお金への選好の特殊性が、消費せずお金を貯めすぎるという人々の行動を起こしてしまう。株や不動産についても同じようにもてばもつほどうれしいという特性があれば、人々は株や不動産を保有したがるし、そのため価格が上がっていく。バブルの発生だ。しかし、株や不動産をもっていることのうれしさがなくなってしまうと、バブルが崩壊してしまう。そうすると、人々は株や不動産ではなく、お金だけをもちたがる。お金をもちたがるとお金の値段は上がっていく。お金の値段が上がるということは、お金の価値が上がることだからモノの値段が下がるということだ。つまり、デフレの発生だ。デフレが発生すると人々は、買い物をするのを将来に先延ばしにしようとする。なぜなら、そのほうが安くモノが買えるからだ。そうなると、ますますモノが売れなくなってしまう。モノが売れなくなるから、失業が発生する。こうした循環が続いてしまって、長期の不況が発生するというのが小野理論の仕組みだ。

 このような悪循環を止める方法は、ただ一つ、失業者を公共投資や公的サービスによる雇用で雇うことだ。問題の発端は、人々の守銭奴的な貯蓄過剰にあるのだから、政府によってモノやサービスの需要を作り出すことが大切なのである。この時に大切なことは、役に立たないものやサービスを作り出しても意味がないことだ。それなら、失業者にお金を直接渡したほうが、資源を浪費せずにすむ。生産能力を高めるような公共投資も意味がない。

 

「悪循環を止める方法は、ただ一つ、失業者を公共投資や公的サービスによる雇用で雇うこと。」

なるほどと思うが、小野教授に対して斉藤貴男はこう言っている。

 「消費増税で日本崩壊」斉藤貴男著

ベスト新書 2010年11月5日発行

169p〜

 『朝日新聞』(2010年9月22日付け朝刊)に「我慢するより需要をつくれ なぜ雇用創出か」と題する、小野善康・大阪大学教授(内閣府参与)のコラムが掲載された。小野教授は、菅首相とは東工大の同窓で、彼の政権の「知恵袋」とされている人である。

 こんな論旨だった。

 日本は深刻な不況に直面し、財政赤字と円高に悩んでいる。物が売れないから雇用も減って就職難が広がっている。保育も介護も救急医療も不足しているのに、他方で人が余っている。問題は、せっかくある労働力を使い切れていないことにある。労働力が余っているのに仕事がないのだから、政府が音頭をとって雇用を増やせばよい。不況期には、生活の質に直結する分野で政府が支援し、雇用をつくることが成長戦略になる。

 

《結局、お金の工面だけでは需要は生まれず、政府が自ら雇用をつくるしかない。そのため第一にやるべきは、雇用を生まないばらまき的支出を仕分けし、雇用創出予算に転換することである。これで雇用が増えれば、増税せずに経済成長ができる。

 それで足りないなら、増税してその分を雇用創出に使えばよい。(中略)所得税や消費税の増税で介護や保育にお金を使い、雇用を増やしてもいい。環境税と補助金を組み合わせれば、他の財源に頼らずに環境分野の需要と雇用をつくることができる》

 

小野教授は少し前(2010年7月15日)の講演でも、消費税率を2%引き上げて約5兆円の財源を確保すれば「単純計算で160万人を雇うことができる。完全失業率は2.8%に下がり、国民の不安感はかなり解消する」という持論を展開していた。

 肝心な雇用の中身が具体的に指摘されているのは、保育と介護と救急医療だけである。 いかにも机上の空論だ。保育や介護や救急医療を、それらの必要性ゆえに充実させるのではなく、雇用のために使おうという発想からして本末転倒だ。

 ゲームの盤上に見立てた経済社会の、人間という名の駒をいじくりながら、ああでもない、こうでもない、と思いつきを並べ立てている印象がぬぐえなかった。「知恵袋」と言えば、首相の「指南役」という役どころだ。小野教授の論文や講演からうかがえるのは、消費税増税、法人税引き下げへ、国民を誘導するため「露払い」の役を演じているとしか見えない。

 

斉藤貴男は小野善康が言う、消費税増税が派遣社員の増大をもたらしていると言っている。

 

「仕入れ税額控除」 消費税額を計算するうえで必要となる控除事業者が国に納める消費税額は、売上時に受け取った消費税額から、事業に必要な物品購入など仕入れのために支払った消費税額を差し引いた額を納める。

同書 66p

仕入れ税額控除の仕組みに合わせた人事・労務のあり方を追求してみたらどうなるか?

 現実の企業社会がそれをやっている。

 ・・・正規の雇用をできるだけ減らし、必要な労働力は派遣や請負、別の事業者に外注する形にすれば、それだけで大幅な節税ができてしまうのである。そのために派遣子会社を設立するやり方も、近年ではごく一般的になった。

 

 小野教授は消費税で雇用を促進しようといっているが、その消費税が派遣社員を増やしてしまうことになっているようです。雇用を増やすには消費税以外が良いようですが、皆さんはどう思われますか?雇用を増やす・・・増えたのは派遣社員だった・・・。

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原発と復興を考える 18 地域力
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18 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「地域力」

地方選完勝の御礼と首都圏機能の分散

 

 統一地方選挙が終わりました。

 当会(医療と介護の問題に取り組む地域リーダーの会)では 

兵庫県議会 姫路市議会 とも

  事務局議員 

参加議員

  賛同議員  

協力議員

 全員当選いたしました。

 皆様のご協力に感謝申し上げます。

 これをもって、今まで以上に皆様のご意見が、

 県政や市政に反映できることになりました。

 当然、これまでどおり以上に国へのパイプも太いものとなりました。

 医療と介護の分野だけでなく、

経済や財政や教育にも大きな発言権が実現いたしましたので、

 ご遠慮なく、ご相談いただけることをお待ち申し上げています。

 

 市長選に関しては

 当会では「医療を守る市条例」の準備に入っている時期であったので、

 混乱を避ける意見が多数にありました。

 政策実現のスピードを考慮する意見もありました。

 

 姫路では、首長と議会と市民による、

健全な市政運営が実現できるように準備が整いつつあります。

 首長のリーダーシップという一元的な責任転換はしない、

 議会との二元制の本来の姿であり、

 市民との三元的な未来像を追求するものです。

 

 当会が考える、共感の持てる市政作りとは

 「公益」「交流」「公平」「市民優先」

「地域愛」「居心地」「安心」「満足」

 がキーワードとなっています。

・・・

神戸新聞 ネットニュースによると、

特集】11ひょうご統一選

(2011/04/25 02:27)

 姫路市長選は前回無投票から一転、4人が争う混戦となった。昨春発覚した県管理の河川からの違法取水や、10人が負傷したごみ焼却・再資源化施設の爆発事故などをめぐり、市の危機管理の在り方が争点に浮上。会社社長の沖幸子氏(64)ら新人3人からは、市長のリーダーシップを厳しく問う声が上がった。

 これに対し石見氏は、姫路駅周辺整備など2期8年の実績を強調。政令指定都市を目指す方針も示し、市政を引き続き担う決意を訴えた。

 「市民党」を掲げ、今回も政党推薦を受けないスタイルで臨んだが、実際には松本剛明外相の後援会や自民県議らが応援。地元財界や労組など約170団体から推薦を受けるなど組織戦を展開、他の候補を引き離した。

・・・

 私の個人的な印象では、現職は神戸新聞で「組織戦を展開」としているが、現職有利との楽観的な見方で、組織が積極的に動いている様子はあまり見なかった。

 沖氏は姫路入りが遅かったこと、事務所の選挙能力も低かったことが挙げられる。その割には予想より、二万票ほど多いという印象がある。

 

 現市長に望みたいことは、いろいろとありますが、

 新たに、次の点に果敢に挑戦してもらいたい。

 

○首都圏機能の分散に、手を上げてもらいたい。

 MSN産経ニュースより、

【東日本大震災】

石原都知事が首都機能分散に言及「証券市場の中心は大阪」

2011.4.22 18:47

 東京都の石原慎太郎知事は22日の定例会見で、東日本大震災を踏まえ、「首都圏機能はいい形で分散されるのが好ましい。東京への過度な集積は好ましくない」と強調。首都を東京に残したまま、一部の首都機能を分散し、バックアップ機能の充実が必要との見解を示した。

 大震災の発生後、橋下徹大阪府知事と大村秀章愛知県知事が先月22日の会談で、首都機能分散の必要性を指摘しており、石原知事の発言で議論が加速しそうだ。

 会見で、石原知事は余震が頻発していることを挙げ、「東京直下の地震の確率は高くなった」と述べた。そのうえで、JR東海が計画しているリニア中央新幹線に触れ、「東京と大阪が1時間で結ばれれば画期的だ」とし、「(首都機能のうち)証券市場の中心は大阪に移すなど、大きな発想力で取り組むべきだ」と訴えた。

 

「実測!ニッポンの地域力」藻谷浩介著

 日本経済新聞出版社 2007年9月20日発行

 この本は面白い!街づくりを考える人には必読の一冊でしょう。

256p〜

 ◆メインフレーム型からサーバー&クライアント型ヘ

 日本が国際競争の中で生き残るには、東京というぬるま湯のような巨大市場の中でしか儲けることができないような企業の淘汰は不可避です。他方で地方都市も、東京からのおこぼれで生きる支店経済を脱して、特定の分野において世界の中枢機能の一端を担うような産業構造を構築していかねばなりません。これを私は、「メインフレームコンピュータ型からサーバー&クライアント型への、国土構造の転換」と言っています。

 情報システムの世界では、1990年あたりまでは、巨大なコンピュータを1基中心に据えほかは単なる端末という「メインフレームシステム」が普通でした。ところが今では、多数の小型コンピュータをネットワークさせて中枢機能を分散して受け持たせるという「サーバー&クライアントシステム」がすっかり普及しています。その理由はリスクヘッジ(危機回避)です。メインフレームがウイルスに侵されたり天災にやられたりした際に全システムが止まってしまうというのは、今の情報化社会では耐えられないことなのです。サーバー&クライアントシステムであれば、一部のコンピュータがウイルスに侵されても、天災でネットワークが数カ所切断されても、システム全体は稼働し続けられます。

 国土構造でも同様で、欧米・アジアでは「サーバー&クライアントシステム」が採用されています。たとえばロンドンとパリが同時に壊滅してもヨーロッパは壊滅しません。上海が壊れても中国は壊滅しません。ニューヨークが壊滅しても、米国はまったく壊滅しません。サーバーたりうる都市が無数にあるからです。それなのに東京が壊滅すれば日本が麻痺することは非常にはっきりしています。日本だけが昔ながらの「メインフレームシステム」を堅持しており、東京という絶対の中心以外の都市はみな端末にすぎないからです。しかも、この東京はよりによって地震の巣の上、それも厚い軟弱地盤の上に立つ世界最大の都会なのです。

262p

◆人口再生産性の低い東京への若者集中が日本消滅を招く

 最後に、経済や文化、政治の最も基本的な前提条件である人口について、東京集中に一大弊害のあることを述べておきます。以上のような論点に賛成できない人でも、この最後のポイントを否定するのは困難でしょうから、心してお読みください。

 東京には、出生率が1.0未満と極端に低い、つまり人口の再生産性が低いというたいへんな欠陥があるのです。これは、極端な人目過密が子育てしにくい環境を形づくっており、ワークライフバランス(仕事と生活のバランス)が崩れているからです。女性が高学歴で就労しているからだという説の方が多いので困るのですが、実際には首都圏は国内で最も若い女性の専業主婦率が高いところです。専業主婦が少なく、共働きが多い都道府県ほど出生率が高いというのは明白な傾向なのですが、東京は通勤時間が長いためになかなか女性が働きにくく、その結果出生率も低いという状況にあります。

 そういう場所に若者を集めてきたことは、明らかに日本の人目減少を早めました。流入する若者2人につき1人しか子供が生まれないのですから、当たり前のことです。実は、人口爆発の抑制が国家的課題だった昭和40年ごろまでの時代には、東京への若者集中は極めて有効な策でした。逆にいえば、ここ数十年は明らかに時代遅れの施策といえます。

258p

◆生活の質(QOL)の向上を目指した首都機能移転

 ・・・確かに東京は世界最大の人口集積ですので、受動的にモノや飲食を消費するには世界一楽しい場所です。でも、空気が汚い、星が見えない、川の音がしない、山が見えない、そもそも家が非常に狭くて庭が持てないなど、住環境面では地方都市はもちろん世界の大都市の標準からもたいへんずれた、貧しい点が多くあります。生活の質(QOL)がある分野で非常に低いのです。これだけ豊かな国の国民であれば、はるかに自然が豊かで、広い家で楽しく暮らすことができるのが道理ではなかったでしょうか。

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原発と復興を考える 17 被災による剥奪
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17 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「被災による剥奪」

被災地の社会的に合意された必需品調査を急げ!阿部彩に学ぶ。

 

 「東日本大震災復興構想会議」の第2回会合が開かれた。

 復興への意見の集約には時間がかかりそうですね。時間がかかっては被災者の苦しみも大きくなっていくので、早急に取り組まなければなければならないことがあります。

 会議で提案されなければならないことのひとつに

 被災地の「社会的に合意された必需品」調査です。

 とりあえず、「東日本大震災復興構想会議」を見てみよう。

・・・

復興特区、原発特別法要望…構想会議で3県知事

読売新聞 423()218分配信

 

3県知事の発言骨子

岩手県・達増拓也知事

     各市町村の事情にあわせた復興計画の策定を

     復興税には反対

宮城県・村井嘉浩知事

     復興財源に「災害対策税」の創設を

     港湾の集約、国有化を

     国と被災自治体による「復興広域構想」の設立を

     「復興特区」の創設を

福島県・佐藤雄平知事

     原子力災害の早期収束を

     原発災害対策のための特別立法の制定を

 東日本大震災の復興計画を策定するための菅首相の私的諮問機関「東日本大震災復興構想会議」(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)の第2回会合が23日、首相官邸で開かれ、被災した岩手、宮城、福島3県の知事から意見を聴取した。
 村井嘉浩宮城県知事は、被災地に限定して規制緩和や税財政の優遇措置を行う「東日本復興特区」の創設や、津波被害の危険がある沿岸地域の公有地化を提案。国と3県などで構成する「大震災復興広域機構」を設立し、全国の自治体からの職員派遣の調整や、復興推進に関する政府と被災自治体との連携などを担わせることも提案した。
 達増拓也岩手県知事は復興に向けた県の基本方針をまとめた文書を提出し、水産施設の再建や、防災に配慮したインフラ復旧、観光施設の再生などを求めた。また、「財政出動を遠慮しすぎると、後の世代がいなくなってしまう」と大規模な復興予算編成を求めた。
 佐藤雄平福島県知事は「原子力災害が今も進行中だ」と述べ、東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の早期収束を改めて求めた。そのうえで、今回の事故は現行法の想定外の規模だとして、原発事故への対応や損害賠償、復興策などを包括的に定める特別法の制定を求めた。 最終更新:423()232分 YOMIURI ONLINE

・・・

被災地の「社会的に合意された必需品」調査について。

 以前にも紹介した

 「子どもの貧困」阿部彩著

 岩波新書 2008年11月20日

 180p〜

イギリスの著名な貧困研究学者のピーター・タウンゼンド(1928年〜)は、人間の最低生活には、ただ単に生物的に生存するだけではなく、社会の一構成員として人と交流したり、人生を楽しんだりすることも含まれると論じた。彼はそれができない状態を「相対的剥奪」(rela-tive deprivation)と名付け、「人々が社会で通常手にいれることができる栄養、衣服、住宅、住居設備、就労、環境面や地理的な条件についての物的な標準にこと欠いていたり、一般に経験されているか享受されている雇用、職業、教育、レクリエーション、家族での活動、社会活動や社会関係に参加できない、ないしはアクセスできない」状態と定義する(Townsend 1993’訳は芝田1997)。

 

 「相対的剥奪」を「被災による剥奪」として考えてみよう。

182p

 [相対的剥奪」が第2章で行ったような所得(時には消費)という一次元の指標を用いて測る貧困に比べて優れている点は二つある。

 一つは、相対的剥奪は、所得や消費から推測される「おおよその生活水準」を測るのではなく、直接生活の質を測る手法である点である。生活水準は、現在の所得以外の要因(たとえば、貯蓄や持ち家)にも影響されるが、相対的剥奪指標は、これらを勘案して、実際に人々が享受している生活水準そのものを測る方法である。

 二つ目は、相対的剥奪は、社会で期待される生活行動を具体的にリストアップし、その有無を指標化するものであるため、人々の直感に訴える概念である。所得による貧困基準が、いくら○○万円といわれてもピンとこない、という人であっても、「靴を買うことができない」というような具体例を挙げれば、貧困の定義に納得するであろう。

 

 直接生活の質を測る手法であり、

 社会で期待される生活行動を具体的にリストアップし、その有無を指標化するもの。

183p

「合意基準アプローチ」は、「最低限必要なもの」を研究者ではなく、社会全体に選んでもらう手法である。具体的には、無作為に抽出された一般市民に、あらかじめ多めに選んだ項目リストのひとつひとつについて、それが最低限の生活に必要かどうかを問い、回答者の五〇%以上が「絶対に必要である」と答えた項目だけを社会的に認知された必需品とする(これを「社会的必需品」という)。ここで重要であるのは、「あなたには○○が必要ですか」と問うのではなく、「この社会で、ふつうの人がふつうに暮らすのに○○は必要ですか」と聞くことである。

 

「合意基準アプローチ」――「最低限必要なもの」を研究者ではなく、被災者全員に選んでもらう手法、としてもらってはいかがでしょうか。

合意基準アプローチは多数決ではない。 183p〜

 「合意基準アプローチ」が社会科学的にも頑強な手法であるのは、これに統計的手法を用いて、異なるグループ間でも「何か必需品であるか」について一定の合意があるかどうか検定を行うところである。

・・・略・・・

統計的手法を使って、二つのグループの回答傾向に違いがあるかどうかを検定する。これを、高所得者と低所得者、女性と男性、地方に住む人と都会に住む人、という風に、さまざまなグループ分けで検証して、大きな差がないと判断された時に初めて、選ばれた項目が「社会的に合意された必需品」ということができるのである。

 

 「社会的に合意された必需品」の支持率調査をしなければならない。

 本書202pに、所得階級別 平均剥奪指標 のグラフがある。

202p

 タウンゼンドの発見は、ある一定の所得以下となると、剥奪の度合いが急激に増えることである。所得にはある「閾値」があって、それを超えて所得が落ちてしまうと、生活が坂道を転がっていくように困窮に陥っていくというものである。

 

 生活が坂道を転がっていくように困窮に陥っていく「閾値」が、450万円を超えていることが気になります。日本の労働者の平均所得が「閾値」でコントロールされているのではないか、とさえ思えてしまいます。「生殺し」というような・・・。

 205p

 「閥値」の存在が、所得と剥奪の関係が線形でないことを表しており、「低所得=剥奪」という簡単な図式では貧困を捉えることができないことが発見といえる。

 

 ウェル・ビーイング、幸福度の影響もありそうです。

206pには平均剥奪スコアの図があります。

 図から得られる所見として、

     高齢者世帯と有子世帯の平均剥奪指数がほぼ同じ

     乳幼児をもつ世帯の平均剥奪指数が突出して高い

 

「社会的に合意された必需品」の支持率調査・・・参考例としてください。

190p 表6−2

イギリスにおける子どもの必需品の支持率(1999)(%)

項目           「必要である」とする割合(親)                     

暖かいコート           95%

新鮮なフルーツまたは野菜     94%

新しく、足にあった靴       94%

  以下32項目 略  

「東日本大震災復興構想会議」は被災者の必需品支持率調査を行ってください。

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原発と復興を考える 16 東電の賠償金は誰が払うのか
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16 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「東電の賠償金は誰が払うのか」

 

 BLOGOSで 201104211420分に 

 とても興味深い

 河野太郎氏の意見が述べられていたので紹介したい。

プロフィール

自由民主党所属/衆議院議員
小泉改造内閣にて総務大臣政務官、法務副大臣を歴任。

・・・

 救済されるべきは東電ではない

今朝の各紙に東電の賠償に関する政府支援の枠組みが掲載されている。正式決定でもないのに、各紙に同じ内容が載るというのも変な話だが、様子見のアドバルーン、あるいは既成事実化を狙ったものだろう。
 この計画はダメだ。なぜ、最初から国民負担で東電を救済しなければならないのか。
 事故の責任者として、東電には、逆立ちしても鼻血も出ないという状況まで賠償させなければならない。送電網を含め、資産の売却も必須だ。
 今回、送電と発電の分離に至らないような枠組みは、国民が許してはいけない。
 国が立て替えて、東電が利益から払い戻すというのもおかしい。電力は、総括原価方式で、必ず利益が出るようになっている。それでは結局、国民が負担するだけだ。
 電力の安定供給に問題がでるというならば、東電に全てはき出させた上で国有化すべきだ。現在の東電の存続を前提として、計画をつくるべきではない。
 さらに他の電力会社に負担させ、電力料金を引き上げて、それに充てるなどというのは言語道断だ。それならば、まず、原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた3兆円を使うべきだ。
 この状況で、再処理をどうするかは当然見直しの対象になる。それならば、そのために積み立てた3兆円を当面、賠償に充てるのが筋だ。この3兆円には手をつけずに、政策の見直しはなるべくしないようにして、電力料金を引き上げるなどとはとんでもない。
 この計画では、これまでの原子力政策の過ちを何も改めないということになる。
 マスコミも、解説もせず、大本営発表をそのまま流すようなことをまたやろうというのか。
 東電は、全てを賠償金のために準備するべきで、無駄な広告など、即刻やめるべきだ。
 ぜひ、地元の国会議員に電話して、こんな国民にまず負担させるような東電救済をやめろと声を上げてほしい!

・・・

この河野太郎氏の意見から、問題点を考えてみたい。

 

○国民負担で東電を救済

 先ず、これを読んでもらいたい。

 「消費増税で日本崩壊」斉藤貴男著

ベスト新書 2010年11月5日発行

148p〜

 大企業の間では、およそ非常識としか言いようのない横暴がまかり通ってもいる。たとえば三大メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)グループ傘下の6銀行は、10年以上、法人税をまったく納めていないのである。

・・・略・・・

 企業は法人税納付に際し、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる仕組みがある。財界の強い要求で2004年度の税制改正で繰り越し期間が5年から7年に延長されたのだ。大手銀行は、不良債権処理で発生した巨額の損失を繰り越すことで、課税所得が相殺され、法人税納付ゼロが続いていたという。

 

 次の二点、

6銀行は、10年以上、法人税をまったく納めていない。

 企業は法人税納付に際し、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる。

 

 つまりは、東電がいくら賠償金を支払っても、将来の黒字から支払われなければならない税金を納めなくても良い優遇税制が存在するので、東電の腹は痛まない。多分、銀行以上の15年〜20年程度の法人税納付ゼロが続くだろう。

 

 そして、災害で破壊した発電所や電線網への投資については、

 同書 146p〜

東京・大手町の経団連会館に阿部部長を訪ね、真意をただした。

――驚きました。発言は本当ですか?

 「今年(2010年)1月の時点で、日本の法人所得課税の税率は国税・地方税を合わせて4069%でしたから、20%台のドイツや英国、韓国などと比べて明らかに高いんです。企業が海外から投資する場合は、こういう表面税率が基準になります。でも、すでに国内にいる企業にとって重要なのは限界実効税率のほう。米国はこれが15%程度なので競争力が強い。以前は高かった日本も、今では20%台の前半まで引き下げられています」

 「限界実効税率」とは、表面税率から、減価償却率や投資税額控除などの控除項目を差し引いた税率のこと。他にも、過去の損失を7年間繰り越して黒字と相殺できる制度もある。

 

 ここでは、「限界実効税率」によって、日本の法人税は高くないということが分かる。

 そして、災害で破壊した施設の再建には、多額の控除が存在する。

 

○送電網を含め、資産の売却。

・送電網の売却は必要だろうと思えます。

・送電網は国が買い取り、その金額で東電は賠償金を支払う。

・発電には、新日鉄、東芝、日立、等の一般企業に規制緩和を進め、発電を東電と自由競争で効率の良い価格競争をしていただく。

・送電網は将来、電力事業を担う諸企業で送電網会社を設立し、国から買い取る。

  等ではいかがでしょう。

 

○東電国有化

 東電の国有化はできない。

 東電の大株主を見てほしい。大手金融機関のほかに、東京都がある。石原都知事圧勝で国有化はなくなった。民主党だけではなく、今や東京都には誰も逆らえない。

 

○総括原価方式

マネー辞典によると、

総括原価方式  

公共料金が決められる際に用いられる考え方の一つ。料金を、商品サービスを提供するのに必要な原価をちょうど賄うだけの収入を得る水準に設定すること。つまり、事業運用にかかる費用と適正な事業報酬の和を適正な原価とし、設定するものである。最近は規制改革の流れを受け、これの修正方式や別の方式の採用がなされている。

この方式を用いると、メリットとして、料金を決定する際の根拠が明確である、事業者・消費者双方が過大な損失・負担を強いられることが無い、長期的な設備投資へのインセンティブが図られるなどのことが期待できる。しかし、その料金の性質ゆえに、料金設定までに膨大な時間とコストがかかること、コストを削減する誘因が働かないことなどの問題点も考えられる。Ads by Google

 

・事業運用にかかる費用と適正な事業報酬の和を適正な原価とし、設定する。 

 ということは「適正」な原価として、電気料金の引き上げは避けられない。

2011.4.5 10:29 に蓮舫・内閣府特命担当大臣はこう述べた。

 

 蓮舫節電啓発担当相は5日午前の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、夏場に向けた節電対策として電力料金の値上げが注目されていることについて、「現段階において電力料金を上げるというような話はあってならない」と述べた。

 

「現段階において」・・・であって、いずれは時期をみて上げるというものだろう。

 

○原子力環境整備促進・資金管理センターに積み立てた3兆円を使うべきだ。

是非にそうしてもらいたい。

 

○「マスコミも、解説もせず、大本営発表をそのまま流すようなことを」いつもしているので、結局は国民が賢くなる以外に、救われる道はない。

 

○「これまでの原子力政策の過ち」は、党派を超えて見直して欲しい。

 今回の河野太郎氏の意見は野党的になっているように思える。

 「これまでの原子力政策の過ち」への指摘は、今、始まったばかりではない。

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原発と復興を考える 15 OECDの誤解
JUGEMテーマ:大地震
 

15 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「OECDの誤解」

 

 昨日に消費税増税で医療が崩壊することを書いて、今日のこの記事に驚いた。消費税20%では、日本の医療は「損税」で必ず崩壊する。

・・・

消費税20%も・引き上げのチャンス…OECD

読売新聞 421()1840分配信

 経済協力開発機構(OECD)は21日、日本経済について分析・提言する「対日経済審査報告書」を発表した。
 「財政状況は極めて厳しい」と強調したうえで、財政健全化のため、「消費税率は20%相当まで引き上げることが求められるかも知れない」と指摘した。消費税を中心とした税制改革を早期に行う必要があるとの認識を示した内容だ。
 都内で記者会見したアンヘル・グリアOECD事務総長は「日本は消費税率が低く、引き上げのチャンスがある。一朝一夕にやる必要はなく、徐々に行うことが重要だ」と述べた。
 報告書は「公的債務残高は国内総生産(GDP)比で200%といった未知の領域にまで急速に増加している」と、日本の財政悪化に強い懸念を示した。政府は昨年6月、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化する目標を掲げているが、「目標達成には税収の増加が必要だ」として、消費税率の引き上げを強く求めた。

最終更新:421()200

 

 OECDが消費税を20%と言っているなら、10%ぐらいは仕方がないか・・・と思われる人も多いだろう。

 しかし、昨日に紹介した本「消費税のからくり」には、このようなことが書かれていた。

この本は斉藤貴男の渾身の一冊だろう。面白い、読んでみてください。

・・・

「消費税のからくり」斉藤貴男著

講談社現代新書 2010年7月20日発行

167p

日本の税率5%は欧州基準なら10%に相当

 ヨーロッパの“累進的な”付加価値税の実態は、そのまま日本の消費税増税論者がいかにいいかげんな嘘を重ねているかを物語っていた。彼らは消費税の税率がヨーロッパの付加価値税よりも低いことを嘆き、一刻も早く同じ水準に引き上げなければ財政が破綻すると絶叫しているが、はたしてそうか。

 東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)の海外畑から金融論の研究者に転じた菊池英博・文京学院大学教授が、日欧間の重要な比較をしている。それによれば、日本の消費税率5%のうち国税になるのは4%でしがないが、国税収入に占める割合は22%にも達している。一方、英国やドイツ、イタリア、スウェーデンなどの付加価値税率は17〜25%と高いが、国税収入のやはり22〜27%程度を占めているに過ぎないというのだ。

菊池教授によれば、ヨーロッパの付加価値税には前述のように軽減税率が採用されている食料品や生活必需品が多く、また医療、教育、住宅取得やこれに関連する不動産、金融など、非課税項目も少なくない。対する日本の消費税には非課税項目が医療費や住宅の賃料などに限られ、軽減税率が適用される分野もないままに運用されてきた。〈つまり、欧州での消費税は贅沢税的な性格を持つ。欧州基準で日本の消費税率を概算してみると、10%近くになるのではないか〉(『消費税は0%にできる』ダイヤモンド社、2009年)。

 

「消費増税で日本崩壊」斉藤貴男著

ベスト新書 2010年11月5日発行

「消費税のからくり」と合わせて読むことをお薦めしたい。

 51p〜

主要国の国税収入全体に占める割合の比較

   消費税率(国税) 消費税の割合

イギリス   17.5%   22.5% 

ドイツ    18.0%   27.0% 

イタリア   20.0%   27.5

スウェーデン 25.0%   22.1

日本     4%    22.1

(5%の内、1%は地方税なので、国税としては4%)

これによれば、日本の国税収入に占める消費税の割合は、スウェーデンと同じである。単純な比較が禁物であることは言うまでもない。ただ、日本の消費税率は低いのだからもっと引き上げるべきだという理屈が短絡に過ぎることも、また確かなことだ。

・・・

 

 なるほど、日本の国税収入に占める消費税の割合はスウェーデンと同じなので、スウェーデンと同じ福祉国家でなければおかしいのではないか?

 多分、OECDは日本の消費税の実態を知らないのだろう。

・・・

「消費増税で日本崩壊」

53p〜

 ヨーロッパの高税率の中身

 では、それほど高い税率で、ヨーロッパでそのために暴動が起こったとも聞かないのはなぜか? 繰り返すが、フランスの税率は19・6%、ドイツは18%、イギリスは17・5%、スウェーデンは25%。しかし、なのである。

 ヨーロッパ暮らしの長い友人のジャーナリストの話だ。

 「高い消費税をとっている国には非課税や税率ゼロの品目、軽減税率が適用されている品目が数多くあるのです。たとえば、イギリスではデリカテッセンなどスーパーで買う食品や惣菜に消費税はかからない。消費税がかかる食品はレストランでの食事やテークアウトの温かい食品だけです。標準的なイギリス人は毎日、家で食事するので、消費税が20%近くでも普段の生活にはあまり影響がないのです」

 改めて調べてみた。イギリスは、

 ▽非課税・・・土地の譲渡・賃貸、金融、保険、医療、教育、福祉

 ▽ゼロ税率・・・食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内交通費、医薬品

 ▽軽減税率・・・家庭用燃料、電力

 フランスでは、

 ▽軽減税率(5・5%)・・・食料品、書籍、レストランでの外食

 ▽同(2・1%)・・・新聞、雑誌、医薬品

 ▽フォアグラ、トリュフは5・5%、キャビアは19・6%

 ▽板チョコは5・5%、上等なチョコは19・6%

 つまり、高い消費税率は贅沢品に限った話で、日常生活でふつうに暮らす上では、ほとんど消費税の影響を受けないのである。

 翻って日本では、

 ▽非課税・・・土地・住宅の譲渡・賃貸、保険、医療、教育、福祉

 ▽軽減税率・・・ナシ

▽ゼロ税率・・・ナシ

 もちろん、食料品や新聞、書籍にも消費税がかかっているのは誰でも知っている。それを、5%から10%に上げれば、生活困窮者を直撃することになる。問題の深刻さにおいて生活困窮者に劣るとはいえないのが、零細自営業者への影響である。

 ・・・略・・・ 55p〜

しかも、日本では従来からの間接税も今なお重くのしかかっている。酒税やたばこ税、ガソリン税などだ。たとえば、ビール100リットルに2万2000円の酒税がかかる。従量税(数量を課税標準とする租税)なのでアルコール度数には関係ない。これに対し、イギリスは、アルコール分4%なら100リットル9、746円、米国はたった1、369円。ドイツは平均的な12度のビールなら1、248円。日本ではワイン100リットルで8000円、フランスでは1、134円。日本では、この酒税分に対しても消費税が上乗せされる二重課税だとは先に述べた通りだ。

 ガソリンは、日本は価格の44・8%が税金だが、米国は17・3%、カナダは27・2%、ヨーロッパはもっと高いが、日本のガソリン税は国際的に見て高水準だ。こういう現実だけを取り上げれば、日本人は税金を払うために生きているとさえ言えてしまうのではないか。

 いずれにしても、消費税の国際比較はかくも難しい。少なくとも「先進国の中で日本は際立って低い」という論法は、課税品目の比較からも成り立たない議論なのである。

・・・

「消費税のからくり」169p〜

米国が付加価値税を導入しない理由

逆進性。物価の上昇をもたらす。行政上のコストが大きい。州、地方政府の財源の侵食。

・・・

 私たちもOECDも日本の消費税の本当の姿が見えていないのではないだろうか。

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原発と復興を考える 14 復興税で医療崩壊?
JUGEMテーマ:大地震
 

14 原子力問題と復興への提言

 被災による貧困と子どもの問題「復興税で医療崩壊?」

 

 復興財源として「消費税」増税案が出ていますが、この消費税の問題点を整理して考えましょう。「暮らし、医・職・住」に消費税はどう影響するのかを簡単に整理してみる必要がありそうです。

 結論から言えば、消費税は消費者が払っていると、消費者が錯覚するような名前がつけられているので、その本来の内容が正しく消費者に伝わっていない。その本来の内容は「物品税の拡大」なので、「物品税の拡大」として、消費者も理解をして、考え直す必要があります。「物品税の拡大」として、税が及ぼす影響を理解する必要です。消費者が支払っている「預かり金」として業者が支払っていると私たちは理解していますが、法律ではそうではないのです。日本は法治国家なので法に沿って考える必要があると、考えています。

 消費税の問題で、賛否両論の意見が出るのは、消費税が「物品税の拡大」であるという、「物品税の拡大」の税が本来もっている意味が認識されていないから、混乱した議論になるのではないか、と思っています。

 ・・・

消費税率アップに賛否両論…構想会議検討部会

読売新聞 420()2027分配信

 菅首相の私的諮問機関「東日本大震災復興構想会議」の下部組織「検討部会」(部会長・飯尾潤政策研究大学院大教授)は20日、首相官邸で初会合を開いた。
 飯尾氏は会合後の記者会見で、復興財源について増税案を含む複数の案を構想会議に提示する方針を表明した。
 初会合では、出席者から復興財源としての消費税率引き上げに賛否両論が出た。ただ、飯尾氏は記者会見で、「(復興財源の)負担の問題は税制、復興債、その他の問題について予断なく議論していきたい。オプションをたくさん示すことになる」と明言した。
 検討部会は、構想会議の指示や同部会専門委員の提案に基づき、復興計画策定に必要な課題について、5月上旬をめどに議論を集約、構想会議に報告することを目指している。

最終更新:420()2027

 ・・・

 「暮らし、医・職・住」の「医」の問題を考えてみたい。

 私は以前のブログ2010年6月19日に、「緊急提言 消費税10%で日本はどうなるか」を書いています。主に病院損税の問題点を書いています。

 ・・・

 1)医療崩壊が本格化する

      病院損税の拡大による、病院の経営難が深刻化。

 

89年の3%消費税導入に際し、消費税法では保険診療は非課税とされています。しかし、医療機関では薬や医療器具や材料の仕入れに消費税がかかるので、それに見合う分として診療報酬の一部が引き上げられました 。この額は医療内容によって変わりますが、平均して0.76%。医療機関にとって、この程度の診療報酬引き上げでは消費税の負担を補うことはできず、医療機関が損をするという、いわゆる「損税」が発生することになりました。
 97年に消費税が5%に引き上げられると、診療報酬はさらに0.77%引き上げられ、本来の医療費より1.53%上乗せになりましたが充分ではなく、医療機関の損税は日本病院会の02年の調査によると、1病院あたり年間7482万円にもなっています 。さらに、その後の診療報酬マイナス改定で上乗せ分がまったく分からなくなってしまい、病院の経営上ゆゆしき問題になってきています。

医療は非課税とされているので、私達患者に消費税を転嫁することは出来ません。病院の「経営困難」による倒産があれば地域医療の崩壊に拍車がかかります。今後、このまま消費税の増税があれば、病院の健全経営と安全で適切な医療が失われることになり、その被害者は私達患者であることを忘れてはいけません。

 社会保険診療を非課税から課税に改める議論もあります。

私達は地元議員から国へ、医療から消費税を無くすようにお願いしています。そうすれば、薬価や診療報酬は下がり、患者負担を軽減することもできます。

 救急や多くの入院患者を引き受けて下さっている病院に対しては、仕入れ品の消費税を早期に還付するのが公正なあり方ではないかと、皆様のご理解をお願い申しあげます 。還付された費用は、病院勤務医の医師不足による過重労働が問題になっているので、医療行為以外の医師の仕事を軽減させるための医療秘書の雇用や、医師の待遇改善等に使われる必要があると考えます。(医療秘書:高度化、チーム医療化が進む病院では、医師のスケジュール管理や、医師・看護師等の各職務のパイプ役を担う存在として、大きな役割を期待されている。)  

・・・

 病院損税は以前から問題にしていました。安部晋三氏が内閣総理大臣であった頃、知り合いの代議士を通して、病院損税問題を伝えてもらった。その年の2006年の年末の大手新聞全紙一面で、「病院損税」解消へ向かう意思があることが記事になったので、大いに安堵したが、連なっている記事の内容が悪かった。徴兵制ならぬ「徴医制」にも言及していたので話がややっこしくなった。田舎に医師が足りないのなら、田舎に強制的に若い医師を送り込むようにすれば良い、というような憲法も変えなければならない発言を同時にしてしまったので、そのことに反対する人達の声もあって、損税問題がうやむやになってしまったような、感じでした。正直に言って、私は安部晋三氏に期待していました。

 

 その後、各政党にも「病院損税」問題について、2年ほど前に回答をいただいています。

 

・自民党代議士からは、自民党として公式な見解は出せないが、病院がここまで疲弊している事実がある以上、個人的には還付する必要があると考えています。

・公明党からは、医療崩壊が深刻な事態になっているので還付は必要だとの回答。

・民主党からは、段階的にではあるが全額還付の方向で考えたい。とりあえず病院が購入する医療機器にかかっている損税還付から考えていきたいとの回答。

・共産党からは、そもそも消費税そのものに反対しています、との回答。

 

その他の政党については当会(医療と介護の問題に取り組む地域リーダーの会、という超党派での政策研究グループ)に参加している議員がいないので、質問も出していません。

「病院損税」には各党共通に問題を感じているのですが、私は最近の消費税増税議論に「病院損税」の問題が出てこないことを、心配しています。

 

私は「病院損税」を全額ではないが、診療報酬として引き上げて、それに当てることが、「医療に消費税をかけてはいけない」という消費税法に違反しているのではないかと思っていましたが、実は違反していないのです。税そのものに、大きな矛盾があり、矛と盾のどちらにでも解釈できるようになっていたのです。その後の診療報酬の引き下げで「病院損税」が拡大したことにも問題はあるのですが、消費税そのものが、皆でもう一度議論しなおさなければならないものであるのです。

・・・

「消費税のからくり」斉藤貴男著

講談社現代新書 2010年7月20日発行

58p〜

消費税の本質を浮き彫りにした重大判決

 消費税は憲法違反だとする国家損害賠償請求事件の判決が東京地裁民事第十五部で言い渡されたのは、一九九〇年三月二十六日のことである。

59p〜

 判決理由は述べていた。

―納税義務者とは誰か?

 〈税制改革法一一条一項は、「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする」と抽象的に規定してい                          るに過ぎず、消費税法及び税制改革法には、消費者が納税義務者であることはおろか、事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、消費者から徴収しなかったことに対する消費者から徴収しなかったことに対する事業者への制裁等ついても全く定められていないから、 消費税法等が事業者に徴収義務を、消費者に納税義務を課したものとはいえない〉

 

 つまり、事業者は消費者(小売業以外の業種では顧客一般)に対する商品やサービスの販売価格に消費税分を上乗せしてもよいし、しなくても構わない。消費者の側(同前)もまた、購入価格に消費税分を支払ってもよいが、支払わなければならないとは定められていないというのである。

・・・

 消費税は消費者が支払っているのではなく、事業者が支払う物品税であったのです。物品税であるのなら「生活必需品に対しては課税を差し控え、贅沢品には担税力が認められるからこれを重く課税するというもの」という間接税でなければならないはずです。

 少なくとも、医・職・住に物品税がかかることには、議論の必要があります。

 被災地に必要としている医療が、復興税によって崩壊するかも知れない皮肉な事態は、絶対に避けなければならないのではないでしょうか。職と住の問題は後日にしたい。

posted by: 応援しよう東北!(雑華堂) 小嶋隆義 | 大災害 | 11:55 | comments(0) | - | - | - |