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孤独死を考える
JUGEMテーマ:病気
 

「孤独死を考える」20101129日 こじま

  マンション需要に警戒せよ!!

『ひとり誰にも看取られず』を読む  NHKスペシャル取材班&佐々木とく子

阪急コミュニケーションズ  2007812日初版

 

2005(平成17)年924日午後9時から放送されたNHKスペシャルで「若年孤独死」に焦点を当てた番組が放送された。『ひとり団地の一室で』。

「孤独死」といえば「一人暮らしの高齢者がひっそりと亡くなっていく」というふうに思っていたのだが、4050代の中年男性の孤独死が増えているということで話題になった番組だった。私の世代でのことであり、友人の会社の倒産による失踪や、詐欺まがいの不動産取引の保証人になったばかりに商売も家も失った友人がいたり、私自身のビジネスの失敗や、若いころに友人の自殺の後処理を経験していたり、ボランティアでの体験等で身につまされるように見た記憶がある。

その番組での放送や、放送時間枠の都合上で放送されなかった部分、高齢者の孤独死やその他の多くの事例や、その後の追跡やケースの違う実情や対策も含めて本になっている。

プロローグでは「孤独死に関しては目に見えているのはまだ氷山の一角であり、誰も全体像をつかむところまではいっていない。しかし孤独死が、団塊の世代のリタイヤなどを受けて、今後ますます大きな社会問題になっていくであろうことは間違いない。しかしそれは、誰の身にも起こり得ることなのだ。」と記されている。

私の個人的な見解で言えば、団塊の世代は団塊ジュニア世代の補助が期待できることで、まだ救われるところや解決策があるように思えるのだが団塊ジュニアの世代はその後の急速な人口減少により、救いようのない悲劇が待っていると考えている。その彼らが高齢化した時代のためにも、今、取り組んでおかなければ取り返しのつかないことになるだろう。団塊ジュニア世代が40代になり住宅需要も旺盛なようだが、そのマンションは彼らが高齢者となるときには歯抜けになり、全てのマンションが空洞化し、廃墟同然となって、孤独死が珍しいものでは無くなっているだろう。人口が1年で100万人ずつ減少する日本の社会保障は必ず崩壊する。それは20数年後というもうすぐそこにある問題なのだ。国や地方の積み重なる借金はサイの河原で石を積んでいるようなもので、この石積みが崩れ、そのしわ寄せは団塊ジュニアの世代が最も大きな被害を受けることになるだろう。

 

話が別のところへ行かないように、本書を読み進めてみたい。

『孤独死』の定義とは。(第4章)

東京都新宿区は069月に全庁的な「孤独死対策連絡会議」を立ち上げている。

その新宿区の定義によると、

186p 孤独死対策の対象を「2週間に一度以上、見守りがない独居、または高齢者の世帯」とし、死後の発見が遅れても「介護保険や行政サービスを利用していた」「通院していた」「家族ら他者と一定の接触があった」「自殺」などのケースは孤独死に含まない、と定義している。新宿区では区内の1年間の孤独死は100件に上り、そのうち3分の165歳以下と推定している。そのため孤独死対策の対象を高齢者のみに限らず、「独居または高齢者」としているのだ。

 

その孤独死の数は全国での自殺者の数を超えていると言われている。また都会だけではなく地方でも激増している。予備軍の数は途方もないものになっている。孤独死の問題は孤独であることが問題であって、独居の高齢者が増えれば、その数は確実に増えていく。

 

高齢者の人口を見てみよう(第3章)

団塊の世代が65歳になる2012年頃から一気に高齢者は増えていく。

65歳以上人口

05年 2576万人 20.2% 5人に一人

12年 3075万人 24.3% 4人に一人

22年 3613万人 29.8% 3人に一人

42年 3863万人 がピークに後は減少するが総人口も減るので割合は増える

         団塊ジュニア世代が70歳を超える頃である

50年 3764万人 39.6

55年 3646万人 40.5% 〜2人に一人が高齢者になっていく

 

高齢者が増えれば独居の高齢者も増えていく。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」によると独居世帯数は25年には4割近くにまで増加すると推計されている。家族の形が変わり、孤独死大量発生の時代へとなっていく。

 

先ほどに団塊ジュニア世代のマンション購入に触れたが、以下に紹介する事例が更に事態を悪化させることになる。人口の急激な減少による需要過多と相まってマンションは「炭坑跡の軍艦島」となる。住人が廃墟の亡霊然として存在するマンションが大多数を占める。

391p〜 孤独死が起きた場合、その部屋以外の住戸にも風評被害が及ぶ。平たく言えば、「あのマンションで孤独死があったらしい」と噂されただけで、マンション全体の資産価値がさがると言われているのだ。さらに、・・略・・滞納金のある状態で競売にかけられると、価値はさらに下がる。マンションと高齢化の問題に詳しい高崎健康福祉大学教授の松本恭治さんによれば、「競売価格は滞納金額を考慮して決まるために、中古相場を大きく下回っての競売となる。するとこの価格が新たな標準価格になりがちで、価格低下のスパイラルを引き起こしてしまう」のだ。

 

現在でもマンションの孤独死は確実に増えているが、資産価値が下がるからと実態は隠されたままになっているので、対策の講じようがない状態となっている。

私の友人が自殺した後の片付けのさいにも、「周りに分からないように、ただの引越しのように、お願いします」と管理人から何度も念を押された。死後の日にちが経っていたので、凄惨な現場となっていた。

 

97p〜 都心すなわち交通の便などのよい場所に新築マンションがどんどんできれば、ある程度の経済力があって新たにマンションを購入する人は、そちらを買う。郊外マンションの売り値が下がってしまっても、買い替えるだけの経済力がある人は、より便利で快適なマンションに移っていく。ところが収入の少ない人や、新たにローンを組むことのできない高齢者は売った金額で新たな物件を買うことが出来なければ、そこを動くことはできない。その結果、郊外の中古マンションには収入が少ない人や、新たにローンを組むことのできない高齢者ばかりが取り残される。そして価格が安いために、空き住戸には収入の少ない人や高齢者が新たに入居してくることになる。

 

その結果、特定の階層が集積する“フィルタレーション”という現象が起きる。しかし、その問題は郊外型に止まらない。大規模化、高層化するマンションは立体化されるほど住民が社会的孤立していくので高層階の高齢者の孤立が大きな問題となる。住民が高齢化すると空き住戸も多くなり、自治会どころか管理組合さえ機能しなくなってしまい、管理費や修繕積立金の徴収もできないところが出現する。交通至便な場所であっても居住者意識の低い住人が多ければ、コミュニティの形成も難しく、隣の住人が亡くなっていても気がつかないことは十分にあり得る、と本書は指摘している。

 

では介護付きマンションはどうなのだろうか。私は医療や介護のボランティアをしているので、多くの情報が耳に入ってくるのだが、トラブルが激増している現実がある。いざ介護が必要になってみると契約書と全く違った対応であったり、思っていた介護の質には遠く及ばなかったり、医療を伴う介護が必要になった時には無力であったり、という相談が多く寄せられている。これは詐欺だと思える物件も多く、多くの人が泣き寝入りしている現実がある。弱者を喰い物にする悪徳不動産業者があまりにも多い。死期が近づいた高齢者が訴訟することのないことも業者は見透かしている。介護付きマンションは業者の選定を厳密にしなければならない。9割の物件は信用が出来ないと言える。2017年頃から、問題は本格化してくる。実際に介護が必要な人たちが激増してくるからだ。業者の謳い文句が全て無責任なセールストークであったことが暴かれる。

 

孤独死は無くならない。死亡時からの発見の時間を短くすることはできても、孤独死を無くすことはできない。個人情報という大きな壁があるからだ。命より大事な個人情報があるとでもいうのだろうか。しかし高齢者をよく観察してみると大半の独居高齢者は悪質業者に高額商品を売りつけられている。高齢者の孤独な寂しさも尋常のものではないが、悪質業者への警戒感も尋常なものではない。悪質業者の高齢者への押し売りがある限り個人情報の問題は大きな壁のまま残る。つまり、悪質業者の高齢者へのワンtoワンマーケティングは殺人と同じ程の犯罪行為と考えても間違いはない。

 

「見守り協力員」「ふれあい訪問」「よろず相談」等の取り組みも必要だが、マンション管理室を談話室として、管理人を中心としたコミュニケーションの場を提供することも自然な形で有効だろう。管理人としては、私のような、酒は飲まない・タバコは勿論吸わない・喧嘩はしない・ギャンブルもしない・政治や宗教にも中立で・無駄なものを決して売りつけたりしない、そして趣味は哲学と詩作とボランティアという人間が適当だろう。又はそういう人間を中心にして複数のマンションや自治会を管理する組織も考えられる。

管理人室を食事もできるデイケアセンターにすることも有効だろう。私は料理人で美味しいものを作ることには自信がある。そして、福祉にも詳しい。知り合いの医師が言っていたことだが、高齢者の場合、栄養管理というよりも、美味しいものを食べるということの方が重要であるらしい。

ヨーロッパではコミュニケーションのしっかり形成された中古マンションの方が新築マンションよりも価格が高いことが往々にしてあるそうだ。日本でもそうなっていくだろう。

4170p〜にこういう指摘もある。

国交省が建て替えの目安は築60年と言っているためにそれが近づくと逃げ出す人がいる・・略・・。そうなるとマンションの空洞化が起きてしまい、管理組合が機能しなくなるような事態もおきてくる。国交省でも「現時点で築30年以上のマンションは全国に約56万戸あり、10年後には3倍の約162万戸になる。古いマンションほど管理組合の重要性は高まるが、居住者の高齢化や賃貸住戸の増加で、機能不全に陥る組合が急増する」という見通しをふまえて、民間の管理会社が、理事会も含めた管理組合の機能そのものを請け負えるような制度の検討を始めた。

しかし、デメリットも大きいようだ。171p

管理組合や理事会の機能を管理会社に委託してしまったら、管理費の値上げや修繕、建て替えなどが、管理会社の思惑通りにできるようになってしまう。

 

管理会社の存在意義の哲学も問われるようだ。企業の社会的責任(CSR)という以上の企業の姿勢が求められることになりそうだ。

 高齢者の対策は「居住者の相互理解と管理の質」でありそうだ。

 

 176p176pの指摘にも耳を傾けたい。

 一人暮らしの親のことを気にかけていても、遠くに住んでいる場合など、心ならずも孤独死させてしまうケースもあるのだ。

 「マンションの部屋の中には、家族以外は入れません。管理人も民生委員も入れないから、住んでいる人が自分で警報を鳴らすしかない。たとえ煙がでていても、ドアは隣の人も開けられない。消防と警察を待つしかない。人が動くと感知するセンサーを、公的機関が取り付けるようにしないとだめではないでしょうか。認知症が発症しているのかどうかが本人も周囲も分からないケースがすごく増えてきているように感じます」

 電話をしたりたまに訪ねたりするくらいでは、認知症はなかなか発見できない。人が来ると、そのときだけしっかり受け答えをすることが、往々にしてあるからだ。

 

 東京都には関連団体に「財団法人 東京都防災・建築まちづくりセンター」があり、有料で見守り窓を請け負う「あんしん入居制度」を行っている。

 契約出来ることは

 見守りサービス(利用料を毎年払う、年間利用料44100円)

 葬儀の実施(10年間費用を預かって実施 30万円)

 残存家財の片付け(10年間費用を預かって実施 15万円)

 事務手数料も必要なようで55650

全部頼むと契約時に549750

 見守りには24時間電話相談受付も含まれる。

 この金額だと1000人程の契約者があれば民間でも相応のことができそうだ。

 

田舎にも孤独死はある。私は山歩きが好きで時々山へ行くのだが、兵庫県と鳥取県の県境の山懐の村で捜索隊と出会ったことがある。お年寄りが行方不明だということだった。田舎にも「崖から転落」「山中で持病の発症」「畑作業中」という孤独死もある。

 

阪神・淡路大震災の時に孤独死が大きく取り上げられたことがあった。震災で家を失い、住み慣れた土地を離れなければならなくなった高齢者が、生きる気力を失ったまま、ひっそり息をひきとったというケースや、仮設住宅でのアルコール依存による若年孤独死の問題だった。

仮設住宅で寂しさを紛らそうと過度の飲酒を続け、アルコール依存症に陥り、肝硬変を患ったあげく発作による意識混濁を引き起こして、救急車を呼ぶことができずに死に至ったことがままあったということです。中年男性のアルコール依存者らは孤独死する危険性の高い、孤独死予備軍であるらしい。

当時、神戸の病院に勤務していた医師の話を聞いたことがあるが、自殺者の数も尋常ではなかったと聞いています。関東や東南海の大きな地震も予想されており、対策は急がれる。

 

経済協力開発機構(OECD)加盟21カ国の調査では日本人男性は世界一孤独であるらしい。団塊の世代の一斉退職が始まっている。仕事を失い、社会的つながりを失って、生きがいを失っていくと、一層の孤独が進んでいく。元来、競争にさらされてきたこの世代は、自立が基本原理のようになっており、「依存下手」になっている。

イギリスの精神分析学者フェアバーンは『人間は依存から自立に向かって発達するのではなく、未熟な依存から成熟した依存へと発達する』と述べているらしい。人間は群れで生きる社会的な存在であるので、この認識を心しておきたい。

 

現在、入院(85%)または在宅(15%)で医師の治療を受けている患者のうち、年間の死亡者数は約100万人。団塊の世代になると年間に170万人になる。医療や介護の需要は高齢者の寝たきりや認知症や癌適齢期になると、一人当たり14倍になるために、倍増では間に合わない。

生活援助員(ライフサポートアドバイザー=LSA)の配置を本格的に考えなければならない時期に来ている。LSA民間委託の可能性も探らなければならないだろう。悪貨は良貨を駆逐するとも言うので、悪質業者が蔓延らないうちに取り組みを本格化させなければ多くの犠牲者が出ることになる。

高齢者の孤独をビジネスチャンスに考えている輩の出鼻をくじいておかなければならない。彼らの立ち入る隙のないコミュニケーションの良いマンションや地域を実現しなければならない。

対話のある社会。コミュニケーションは対話から生まれる。中高年の健康管理とコミュニケーションを同時に行える体制を確立したい。

ご近所の力も必要だろう。

ご近所福祉のマップ作りは必要な対策だろう。ご協力していただける「世話焼きさん」「連絡屋さん」等の存在は大きい。

 

最期に、常盤平団地の取り組み等は大いに参考になる。221p223p49p56p59pは必読だろう。

 

posted by: 応援しよう東北!(雑華堂) 小嶋隆義 | 生と死 | 21:15 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |