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原発と復興を考える 17 被災による剥奪2011.04.24 Sunday
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JUGEMテーマ:大地震
17 原子力問題と復興への提言
被災による貧困と子どもの問題「被災による剥奪」
被災地の社会的に合意された必需品調査を急げ!阿部彩に学ぶ。
「東日本大震災復興構想会議」の第2回会合が開かれた。
復興への意見の集約には時間がかかりそうですね。時間がかかっては被災者の苦しみも大きくなっていくので、早急に取り組まなければなければならないことがあります。
会議で提案されなければならないことのひとつに
被災地の「社会的に合意された必需品」調査です。
とりあえず、「東日本大震災復興構想会議」を見てみよう。
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復興特区、原発特別法要望…構想会議で3県知事
読売新聞 4月23日(土)21時8分配信
○3県知事の発言骨子
岩手県・達増拓也知事
・ 各市町村の事情にあわせた復興計画の策定を
・ 復興税には反対
宮城県・村井嘉浩知事
・ 復興財源に「災害対策税」の創設を
・ 港湾の集約、国有化を
・ 国と被災自治体による「復興広域構想」の設立を
・ 「復興特区」の創設を
福島県・佐藤雄平知事
・ 原子力災害の早期収束を
・ 原発災害対策のための特別立法の制定を
東日本大震災の復興計画を策定するための菅首相の私的諮問機関「東日本大震災復興構想会議」(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)の第2回会合が23日、首相官邸で開かれ、被災した岩手、宮城、福島3県の知事から意見を聴取した。
村井嘉浩宮城県知事は、被災地に限定して規制緩和や税財政の優遇措置を行う「東日本復興特区」の創設や、津波被害の危険がある沿岸地域の公有地化を提案。国と3県などで構成する「大震災復興広域機構」を設立し、全国の自治体からの職員派遣の調整や、復興推進に関する政府と被災自治体との連携などを担わせることも提案した。
達増拓也岩手県知事は復興に向けた県の基本方針をまとめた文書を提出し、水産施設の再建や、防災に配慮したインフラ復旧、観光施設の再生などを求めた。また、「財政出動を遠慮しすぎると、後の世代がいなくなってしまう」と大規模な復興予算編成を求めた。
佐藤雄平福島県知事は「原子力災害が今も進行中だ」と述べ、東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の早期収束を改めて求めた。そのうえで、今回の事故は現行法の想定外の規模だとして、原発事故への対応や損害賠償、復興策などを包括的に定める特別法の制定を求めた。 最終更新:4月23日(土)23時2分 YOMIURI ONLINE・・・
被災地の「社会的に合意された必需品」調査について。
以前にも紹介した
「子どもの貧困」阿部彩著
岩波新書 2008年11月20日
180p〜
イギリスの著名な貧困研究学者のピーター・タウンゼンド(1928年〜)は、人間の最低生活には、ただ単に生物的に生存するだけではなく、社会の一構成員として人と交流したり、人生を楽しんだりすることも含まれると論じた。彼はそれができない状態を「相対的剥奪」(rela-tive deprivation)と名付け、「人々が社会で通常手にいれることができる栄養、衣服、住宅、住居設備、就労、環境面や地理的な条件についての物的な標準にこと欠いていたり、一般に経験されているか享受されている雇用、職業、教育、レクリエーション、家族での活動、社会活動や社会関係に参加できない、ないしはアクセスできない」状態と定義する(Townsend 1993’訳は芝田1997)。
「相対的剥奪」を「被災による剥奪」として考えてみよう。
182p
[相対的剥奪」が第2章で行ったような所得(時には消費)という一次元の指標を用いて測る貧困に比べて優れている点は二つある。
一つは、相対的剥奪は、所得や消費から推測される「おおよその生活水準」を測るのではなく、直接生活の質を測る手法である点である。生活水準は、現在の所得以外の要因(たとえば、貯蓄や持ち家)にも影響されるが、相対的剥奪指標は、これらを勘案して、実際に人々が享受している生活水準そのものを測る方法である。
二つ目は、相対的剥奪は、社会で期待される生活行動を具体的にリストアップし、その有無を指標化するものであるため、人々の直感に訴える概念である。所得による貧困基準が、いくら○○万円といわれてもピンとこない、という人であっても、「靴を買うことができない」というような具体例を挙げれば、貧困の定義に納得するであろう。
直接生活の質を測る手法であり、
社会で期待される生活行動を具体的にリストアップし、その有無を指標化するもの。
183p
「合意基準アプローチ」は、「最低限必要なもの」を研究者ではなく、社会全体に選んでもらう手法である。具体的には、無作為に抽出された一般市民に、あらかじめ多めに選んだ項目リストのひとつひとつについて、それが最低限の生活に必要かどうかを問い、回答者の五〇%以上が「絶対に必要である」と答えた項目だけを社会的に認知された必需品とする(これを「社会的必需品」という)。ここで重要であるのは、「あなたには○○が必要ですか」と問うのではなく、「この社会で、ふつうの人がふつうに暮らすのに○○は必要ですか」と聞くことである。
「合意基準アプローチ」――「最低限必要なもの」を研究者ではなく、被災者全員に選んでもらう手法、としてもらってはいかがでしょうか。
合意基準アプローチは多数決ではない。 183p〜
「合意基準アプローチ」が社会科学的にも頑強な手法であるのは、これに統計的手法を用いて、異なるグループ間でも「何か必需品であるか」について一定の合意があるかどうか検定を行うところである。
・・・略・・・
統計的手法を使って、二つのグループの回答傾向に違いがあるかどうかを検定する。これを、高所得者と低所得者、女性と男性、地方に住む人と都会に住む人、という風に、さまざまなグループ分けで検証して、大きな差がないと判断された時に初めて、選ばれた項目が「社会的に合意された必需品」ということができるのである。
「社会的に合意された必需品」の支持率調査をしなければならない。
本書202pに、所得階級別 平均剥奪指標 のグラフがある。
202p
タウンゼンドの発見は、ある一定の所得以下となると、剥奪の度合いが急激に増えることである。所得にはある「閾値」があって、それを超えて所得が落ちてしまうと、生活が坂道を転がっていくように困窮に陥っていくというものである。
生活が坂道を転がっていくように困窮に陥っていく「閾値」が、450万円を超えていることが気になります。日本の労働者の平均所得が「閾値」でコントロールされているのではないか、とさえ思えてしまいます。「生殺し」というような・・・。
205p
「閥値」の存在が、所得と剥奪の関係が線形でないことを表しており、「低所得=剥奪」という簡単な図式では貧困を捉えることができないことが発見といえる。
ウェル・ビーイング、幸福度の影響もありそうです。
206pには平均剥奪スコアの図があります。
図から得られる所見として、
・ 高齢者世帯と有子世帯の平均剥奪指数がほぼ同じ
・ 乳幼児をもつ世帯の平均剥奪指数が突出して高い
「社会的に合意された必需品」の支持率調査・・・参考例としてください。
190p 表6−2
イギリスにおける子どもの必需品の支持率(1999)(%)
項目 「必要である」とする割合(親)
暖かいコート 95%
新鮮なフルーツまたは野菜 94%
新しく、足にあった靴 94%
以下32項目 略
「東日本大震災復興構想会議」は被災者の必需品支持率調査を行ってください。
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